番組審議会

この議事録は公式の議事録をそのまま掲載するものです。

第325回 番組審議会 議事録
平成10年9月22日(火)
テレビ岩手

第325回番組審議会

1.日時

平成10年9月22日(火) 午後1時30分~

2.開催場所

テレビ岩手本社6階大会議室

3.委員総数

13名

  • 出席委員
  • 8名
  • 出席委員
  • 委員長
    斎 藤 徳 美
    委員
    三 原 まなぶ
    委員
    深 谷 政 光
    委員
    二 宮 柊 子
    委員
    勝   雅 行
    委員
    岩 渕 孝 男
    委員
    岩 動   孝
    新委員
    栗 山 大 義
  • 欠席委員
  • 副委員長
    谷 村   繁
    委員
    菅 野 耕 毅
    委員
    田 沼 征 彦
    委員
    澤 口 たまみ
    委員
    玉 山   哲
  • 社側出席者
  • 伊 勢 卓 夫(代表取締役社長)
    清 水 秀 夫(専務取締役)
    横 山 尹 浩(常務取締役報道制作技術担当)
    天 野 雅 行(取締役事業局長)
    阿 部 孝 夫(取締役報道制作局長)
    村 田 憲 正(報道制作局次長報道部長)
    鈴 木 直 志(報道制作局次長アナウンス部長)
    大 村 精 一(業務部長)
    廣 嶼 文 樹(制作部)
  • 事務局
  • 青 山 尚 之(編成部長)
    小 原   恵(編成部)

4.議  題

1.みちのくコカ・コーラドラマスペシャル「生きて、生きて~遠野の里から」
    (平成10年8月15日(土)14:30~15:25放送)

2.その他御覧になった番組についての御意見

5.議事の概要

議題の番組「生きて、生きて~遠野の里から」について
 ・シリアスな問題について、地方局が積極的にアプローチしてドラマを制作した意欲を高く評価したい。
 ・若い女医の成長を表現するためには、老人ホームで生活する人達の悩みを多角的に取り上げる必要がある。
 ・舞台である遠野という土地柄が、あまり生かされていなかったのではないか。
 ・ロケ地で一般の住民がエキストラとして出演しているのに好感がもてた。

など、活発な意見が交わされた。

6.審議内容

別紙のとおり

7.審議機関の答申又は改善意見に対してとった措置及びその年月日

特記事項はないが、キー局及び関係局、関連部署に議事録を配布するなど、関係者に審議の内容を伝えた。

8.審議機関の答申又は意見の概要を公表した場合におけるその公表の内容、方法及び年月日

・自社制作番組「あなたと歩むテレビ岩手」(平成10年9月29日午前11時50分~11時57分放送)で、審議の概要を放送。
・平成10年9月23日(水)付読売新聞岩手版で公表。
・支社・支局に議事録を設置
・当社のインターネットのホームページで議事録を公開。

9.その他の参考事項

資料として以下のものを配布
・テレビ岩手自社制作番組スケジュール表(1998年7月~10月)
・視聴者からの意見の概要

議事の内容

事務局

皆様おそろいになりましたので、番組審議会を始めたいと思います。テレビ岩手報道制作局長の阿部からいくつか報告事項がございます。

社 側

先日、9月10日に、全国局長会議がございまして、その席で上期の全国にニュースが流れた全局を対象に6本、優秀賞が選ばれ表彰されるのですが、テレビ岩手が4月9日に放送したダイオキシンの空中散布約78トンが昭和45年に岩手県で行われたというスクープを中心としたダイオキシン関連のいくつかの報道が、優秀賞ということになりました。

事務局

事務局から、もう一つ御報告がございます。10月1日に全国番組審議会委員長会議がキー局である日本テレビで開催されます。この会議には系列局30社のうち10数社の番組審議委員長が集まりまして「放送をとりまく諸問題」というテーマで意見を交換します。当日は、斎藤委員長に参加いただき、事務局であります私も同行いたします。この会議のテーマについて、御意見がありましたら、委員長のほうにお伝し、引き継いでいただく形にしたいと思います。
 本日のテーマは、「みちのくコカ・コーラドラマスペシャル 生きて、生きて~遠野の里から」です。御欠席の菅野先生からは、訪問看護婦講座を受講なさっている生徒さんにこの番組をみせてとったアンケートをいただいておりまして、皆様のお手元にそのコピーをお配りしています。では、こちらでダイジェストのビデオを準備していますので、そちらを御覧いただき、御意見を伺いたいと思います。

─ビデオ視聴─

委員長

では、御意見を承りたいと思います。

委 員

高齢者問題といいますと、私は身内に切実な問題を抱えておりませんので、深く勉強したことがありません。適切な意見を申し上げることができないかもしれませんが、私自身の感想を述べさせて頂きます。真面目な課題に取り組まれたのは素晴らしいことだと思います。私たちは、番組審議委員としてこの番組を見ましたが、実際のところ、視聴率がどのくらいだったのか気になるところです。番組の構成としては、切り口は老人介護、老人医療の問題にスポットをあててそれを皆に考えさせるということだと思います。一時間のストーリーの中では、老人ホームにおられる方は絶えず家に帰りたいという希望をもっていて、なんらかの障害があってそれが実現できない。主人公はそれに悩むという形になっています。そういう前提があってそれをどう解決するか何が問題をはらんでいるか、という視点で番組が構成されています。ストーリーとしては、解決した形になっていまして、対立している母親と娘のしがらみを解消する手段として娘の子供である孫が出てくるんですね。そこがドラマの作り方として古来ある手法のように感じました。高齢者の問題にスポットを当てるとその辺はもっと複雑で、突き放した形にするほうが頭の中に重く残るような気がします。また、女医の自己成長もテーマになっていると読み取れますが、その場合はもっといろいろな老人ホームの人の悩みを浮き彫りにする必要があったのではないかと思います。ヤエさん1人にスポットをあてるという切り口がはっきりしていますが、いろいろな問題が出てきて女医が悩むという形でも良かったと思います。
 話は変わりますが、遠野を舞台にした物語なので、それを生かしてもっと違った視点もあったと思います。ターゲットをどこに狙うか、マスメディアの特性上、ゾーンを広くとったため、主題がぼやけてしまった印象があります。テレビドラマとしてはそうならざるを得ないだろうという気もします。全体としては、いろいろ考えさせられる番組だったと思いました。

委 員

このドラマは、医療の現場を、一般の人からの視点で見てこうありたいとの気持ちを感動的に表現した、すぐれた作品と言えます。
 視聴者は、このご老人が口では「老人ホームは友達がたくさんいるし、住み心地が良い」と言いながらも、心の中では「家に帰りたいと思っている」ということを、孫の可愛らしさを通じて強く印象づけられます。そして新米の女医さんが、これを見て同情し家族を説得して、結局は在宅医療に戻すが自宅で倒れる。この事によって、視聴者は「この若い新米の女医が、無理しておばあちゃんを家に帰したので、そのために再発した」と受けとる恐れもあります。その後一時回復するが、結局は在宅のまま死を迎え、家族はその状態に満足するというのは良かったと思います。  医療側からの意見を言わせていただくと、まず訪問看護婦さんが言うように、医師は患者の家族のプライベートなところに、あまり口を出してはいけないと思います。医師としてはあくまでも患者さんの病状によって入院が必要な場合は「入院して下さい」、必要が無ければ「退院しても良いです」と言います。ドラマでは病院と養護老人ホームの区別が判然としていませんでした。病院を退院して老人ホームに入ってしまえば、その後は患者さん自身と家族の問題であり、そこに医師が差し出がましく入り込むのは良くない、相談が有れば親身になって考えますが、相談もないのに家庭の事情の中まで入り込むのは、実際には考えられません。お年寄りを老人ホーム特に養護老人ホームに入れるのは、全く個人的な事情です。在宅で療養する為には、それだけのマンパワーが必要で、実際に小さな子供を持ち夜に仕事をしている母子家庭に、在宅でご老人を介護する力がないのを理解しないで、押しつけるのは、どうかと思います。
 若い女医さんが往診に行ってお茶を出されるが、お茶碗がよごれていて飲むのをためらう、これは医師として特に在宅医療を志す医師はしては好ましくないことです。それから、ご老人に出している食事が冷えているといって、放置されている、老人が可哀相、と印象付けようとしていますが、医師が口を差し狭む事ではない、余計なお世話とばかり、障子をバタンと閉める、あの家族の人の気持ちがよくわかります。そのあたりで、この村上という若い女医の未熟さを表現していますが、そこまで視聴者にわかってもらえたでしょうか。
 いずれ、医療スタッフは、入院している患者さんを全力を尽くしてお世話するのが指命と思います。個人的な問題があればケースワーカーが居るはずです。 在宅医療にした時点で、再発があり得ることを家族の人にしっかり伝えることが医師の務めであり、そう説明することにより、家族に、再発が家族の責任でないことを知らせるのです。
 最後に、葬式の行列に医師達が加わっていましたが、これは非常に望ましいことと思います。患者さんの死に対して医師達は、それをoneofthem、即ち大勢の患者さんの死の中の一つとしてとらえるのか、あるいは患者さんの死を一つ一つ親身になってうけとめるか。お葬式に参列する事は非常に大事なことと思います。

委 員

「生きて、生きて」というタイトルを重く受けとめ、果たしてどのようなストーリーなのだろうと想像したのですが、思っていたより明るく、心に負担がのこらず、爽やかな気分で拝見しました。お盆の頃の放送でしたので、身内が集まって見て、感想を聞いたのですが、ドラマの内容は嫌味がなく、登場人物の発言も岩手らしく押さえめに表現していて良かったと思います。先程のお話にもありましたが、ロケーションの場面では遠野を舞台にしていますが、近くにあるような風景でしたので、土地柄を生かせるようもう一工夫あるとなお良かったのではないかと感じました。
 この番組制作の主旨について考えてみますと、高齢化社会というのは避けて通れない問題なわけですので、積極的にこの問題にチャレンジなさった制作意図は高く評価されることだと思います。番組を見た方の受け取り方は様々だろうと思いますが、昨今の社会風潮が科学的であることが重視され、社会システム全体が乾いたものになっている中、このドラマは人生の終焉の際、老人の人格を尊重しており、視聴者にこのおばあさんは良い人生だったと感じさせたのではないかと感じました。老人ホームは様々な深刻な問題があると思いますが、このドラマでは、あえてその部分を抑えて表現し、人生の終焉を満足をもって迎えた姿を描きました。私の周囲もこういう最期を送りたいという話がありました。8月15日の昼間というのは、時間帯的に家族みんなで集まっていますので、よい問題提起をしてくれたのではないかと思います。また、提供した会社も、制作したテレビ岩手さんも企業イメージアップするような、非常に良い番組だったと思います。

委 員

最近民放の番組を見ていますと、どういったことでこのような番組を制作するのか視聴者を馬鹿にしたようなものが多い中、この番組は良い番組だと感じました。全体を拝見しまして、2、3度目が潤んだ場面もありましたが、基本通りの番組という印象も受けました。見たという実感をもてるわかりやすい内容でしたが、見終えた後、資料に番組の主旨として載っている「高齢化社会の問題点を浮き彫りにする」ためには、綺麗すぎたという気がします。私の家族にも経験があるのですが、自宅で老人介護をするとなると非常に大変であり、それが番組では出ていなかったと思います。それぞれの家庭で考えようという問題提起にはなりますが、実際にはこの番組のようにはうまく行かないことが多く、問題点を浮き彫りにするためには、さらっと行きすぎたという気がします。最後の葬式の場面がありまして、55分という短い時間では詳しい家族構成までは触れにくいかもしれませんが、あれだけ親類や近所の人がいたのかと、その人達は、この家族に対してどのように考えていたのだろうか、葬式の場面にしか出てこなかったのは気になりました。

委 員

「生きて、生きて」というタイトルのわりには、いま一歩踏み込んでいないという感じを受けました。遠野の町の風景や遠野らしさがもう少し沢山でると良かったと思います。
 テレビ岩手さんがお作りになるドキュメント番組の場合、最初のタイトルの場面と最後のシーンが、感動的で印象に残りますが、今回は、遠野の町ということで期待していたわりには、それがなかったのと、遠野の昔話のシーンがもう少し長いと良かったと思います。  また、諸事情があって老人ホームに入ったと思いますが、七夕の短冊に「帰りたい」と沢山書いてあるシーンがありまして、私はそこがとても印象的で、そこに視聴者に対する強いメッセージがあったのだと思います。最後の「ありがとう」といって死んでいくことができるような場面を作っていただいたのが良かったと思います。

委 員

私は、このドラマを2回見たのですが、50分ぐらいの時間に内容のあるドラマをコンパクトにまとめるのは、大変なことだと思いました。ドラマの出だしは遠野の風景で小鳥の声が入ってやわらかく、ほのぼのといくのだろうという印象を受けました。実際、老人を抱える家族の関係を訪問診療する女医にスポットをあてながら描き、ドラマとして綺麗にまとまっているという感じがしました。数回のシリーズですと、焦点が変わっていって現実的でドロドロしたものになるのでしょうが、あの時間内にまとめるには丁度良く、いろいろな意味で新鮮といいますか、嫌味のない、そして感動させられる内容でした。また、ドラマの中で老人施設のおばあちゃん達がそのままエキストラとして出演するなど、普通の人をドラマに出しているのが良かったと思います。最後の方で、老人の容態が急変しまして、子供が「おばあちゃん、おばあちゃん」と叫ぶシーンの演技がすばらしく感動的でした。

委 員

介護老人問題を捉えたドラマですが、見終わった後、感銘は薄かったと思います。ドラマの筋の構成が単純で、先程御意見がありましたが、娘とその母との仲直りの手段として孫を使っておりまして、絵に描いたようなパターンだと思いました。老人介護問題というのは、個々の人生の積み重ねの中で起こってくる複雑なものです。すっきりと解決できる問題ではなく、それに老人の個々の病状や、家庭環境が絡んできます。複雑な問題を決められた時間内で放送するためには、筋立ての単純化が必要になるかもしれませんが、老人施設に住んでいる老人が皆家に帰りたいと思っていると考え、それに合わせた解決法をもって物語を展開していると思いました。主人公の女医は御節介で老人の家庭の事情をよく分からずに感情で動いているという印象を受けました。
 ドラマの中では、ところどころに良い場面がありましたが、老人介護は難しい問題を含んでおりまして、我々にとって単純な図式で解決できないものだと思います。

委員長

かなり厳しい御意見を頂きましたが、こういったものも番組づくりに生かしていただけると思います。

社 側

先程、視聴率について御質問がありましたので参考に申し上げますが、御陰様で、岩手地区で11.2%というよい結果を出すことができました。これはJR駅構内でポスターを提示していただき、新聞や雑誌など多くの媒体が取り上げ、前もって話題になっていたこともあると思います。また、日本テレビもこの作品を評価しまして、テレビ岩手から番組購入という形で放送することが決まっています。

委員長

皆様の御意見をまとめる前に私の感じたことを申し上げたいと思います。
 以前テレビ岩手で放送していた「テレビ岩手スペシャル」のように問題をシリアスにとらえて追求していくドキュメンタリーと、ドラマとはタイプが違います。このドラマは高齢者問題に触れながら、気軽に入り込める内容で、家族で見ながら考えるきっかけを与える場としては、放送時間帯も考えられていると思います。見た後、深刻に落ち込んでしまうようなものよりも、本来追求すればたくさんの問題を持つテーマについて、掘り下げるよりも、自然な形で触れながら家族で話題になればそれはそれで良いと思います。現実では、個人個人それぞれ違った問題を抱えていますので、この番組は、ドラマとしてそれを考える一つの切っ掛けになるものだと思います。
 全体的な御意見を集約しますと、高齢者問題というシリアスなテーマに地方局として積極的にアプローチしてドラマを作った意欲を委員の皆様は評価していました。内容については、いろいろな御意見がありましたが、遠野という地域をもう少し強調しても良かった。医師として本来すべきでないことが画面の中にあったのではないか、病院と老人ホームの区別がつきにくいなど、御指摘がありました。また、見終わった後、爽やかな印象を受けたという御意見がありました。一方で、深刻な問題についてもう少し多角的にということで、ドラマとしては平板だったのではないかという御意見もありました。

社 側

舞台として遠野を選んだのは、県内では遠野が高齢者医療に積極的な町ということがありまして、このドラマは実話をベースにして脚本が作られております。実際に老人介護の問題に直面している人達だけではなく、若い世代にも見てもらいたいということで、若い女医の視点でストーリーが展開します。彼女の医師としての成長記録が描けていない面がありましたが、「遠野で頑張っていきたい」といったコメントで女医さんが変わったということを表現しています。今後もこういった路線は継続していきたいと思います。

事務局

次回の番組審議会は、10月20日に開催致します。テーマは「ニュースプラス1いわて」です。